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日記、tips、創作メモ置き場。

No.53

円城塔『Self-Reference ENGINE』を読んだ。

22編の連続しているようなしていないような掌編からなる短編小説。

特筆すべきなのは、「起承転結」や「序破急」の型に薄いことだろうか。

私もそういった小説を(意図せず)書くので、書き手として困る場面、つまり、「話の締め方」についてこの小説をもとに研究してみる。(下に続きます。)

章の最終行の内容の分類としては、以下の5つ。
  1. 詩的
  2. 呼びかけ(人物へ or 読者へ)
  3. 動作(〜する。 / 〜した。)
  4. 願掛け・願い(〜したい。/ 〜と願っている・信じている。)
  5. やれやれ系(メタも可能)

この中で、使用回数が少ないのは5番「やれやれ系」か。やれやれ系という言葉自体、通じなくなりつつあるかもしれないが。他の人物に呆れる以外にも、「救っちゃいますか、世界。」みたいな感じもこの系統だと思われる。

2番から4番は「行動・心情」とまとめても良いのだが、詳細にした。この中では「呼びかけ」が気の利いた洒落を挟みやすいか。「動作」は少し文章としては硬く、緊迫感も出せそうだ。「願掛け・願い」は、感情の見えなかった人物がやるとより効果的だろう。

1番の「詩的」というのは詩を書いたことがないとなかなか難しいところ。個人的に詩は小説より思想が出る媒体だと思うので、たまにやると解放感がある。

(簡単な)研究は以上。

読んだきっかけは、感想会で円城塔を教えていただいたことにある。その節はありがとうございました。

文章は基本的にしつこくなく、しかし重く、しっとりと湿った石に触れるような感覚。それでいて、温かさがある。

伝えたいことというのは分からなかったが、(人工)知能との距離の取り方は、祈りのように感じた。

さらっと読める気にはならず、じわじわ考えながら読み進めたので、カロリーは高いか。

小説脳(何事も小説っぽく世界を捉えてしまう脳)になりそうなので、しばらくは実用書を読む。

ではまた。たたむ


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